王に愛された女



 目を覚ました時、ガブリエルはいなかった。たいてい、夜に抱いた女は夜のうちに帰してしまうが、ガブリエルは自ら帰ってしまったのだろうか?

 なんて思っていると、寝室に備え付けられた台所から音が聞こえた。

「…誰かいるのか?」

 オラシオンはマントを羽織ると台所へ向かった。

「あ、起きたんですか?」

 台所ではガブリエルが朝食を作っていた。

「…何してるんだ?」

「何って、朝食作ってるんですよ」

 ガブリエルが微笑む。眩しいその笑顔にオラシオンは目を細めた。

「いつも、一人で召し上がってるってルークさんが馬に乗った時に独り言で言っていたので作ってみました」

 オラシオンはガブリエルの頭を抱き寄せた。

 いつもなら、ベッドに入ると女がオラシオンを求めることが多い。オラシオンはいつもそれに応える形だった。

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