王に愛された女



 ガブリエルは部屋を探索した。

 朝食の後、国王は少しだけ出かけると言って王宮へ行ってしまった。そのため、ガブリエルは後宮の寝所に置いてきぼりなのだ。

 二時間経っても国王が戻ってこないため、様子を見に行こうと思ったガブリエルだが、後宮を隠すように出現している風の壁を打ち破る自信がないため、こうして寝所の中を探索しているのだった。

「これ…何だろ」

 ガブリエルは見かけないものを見つけて拾い上げた。
 
 それは、蒼い石のついたイヤリングだった。イヤリングなのに、片方しかない。もう片方はどこにあるのだろう?

 ガブリエルはイヤリングを戻そうとして、ハッとした。石に何か刻まれていた。

 何だろう?

 嫌な予感を振り払い、ガブリエルは石の文字を観察した。

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