王に愛された女




「すまない」

 国王の言葉に、アリシアは何も言えなかった。

 たった今、彼の口から飛び出した言葉が信じられなかったのだ。

「…あんなによくしてくださったのに、どうして…」

 アリシアは国王から離れ、右上腕部を恨みがましく見た。

 きっとこの傷のせいだと思ったのだ。

「私が、傷持ち(スカー)だからですか?」

「そうではない」

 国王は首を振る。アリシアは国王に詰め寄った。

「じゃあ、なんで…!」

「ガブリエルに、亡き母の面影を見たからかもしれない…。ただ、今までに感じたことのない感情が、ガブリエルに出会った途端溢れ出した…ただそれだけだ」

 アリシアは悔しくて俯いた。

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