王に愛された女





「…いいか、ガブリエル。着慣れない服だから動きにくいのもわかるがな」

 国王が呆れた顔で言った。

 ガブリエルは後ろに立つ国王を見る。

「いくらなんでもスカートをそんなまくり上げることもないだろ?」

 ガブリエルは自分の姿を見下ろした。

 着慣れない王妃のドレスはあまりにも動きにくい物だった。

 スカートは中に固い素材が入れられて、型崩れしないようにされているし、何より足を前に出すとスカートのすそを踏んでしまう。

 今まで着ていた服はスカートが膝上だったため、一度もそんなことにならなかった。だから歩きにくいことこの上ない。

「そういえば王様。さっきは王宮へなんで行ってたんですか」

 ガブリエルは聞いた。アリシアがいなくなってからかれこれ二時間は経つが、ガブリエルも国王も後宮の寝所から一歩も出ていなかった。



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