王に愛された女





 フリーゼルは信じられない思いでいた。

 国王が、メランコリーを王妃にしなかったことが、あまりに信じられなかったのだ。それどころか国王はガトヤ出身の奴隷を王妃に迎えたという。

 信じられなかった。

「…メラ、出かけるぞ」

 フリーゼルは苛立ちを隠せぬ口調で孫娘を呼んだ。

「メラと呼ばないでと何回言ったと思ってるの、おじい様」

 メランコリーが不服そうに言う。

「あぁ、すまなかったメランコリー」

「もう。私は王妃になれなかったことでただでさえ機嫌が悪いんですの。これ以上怒らせないでくださる?」

 伯爵の地位を得たフリーゼルより、孫であるメランコリーのが立場が上である。このことがフリーゼルは気に入らないが、メランコリーを怒らせると面倒なのは確かなのだ。

「メランコリー、王様に会いに行くぞ」

 フリーゼルは白いコートを羽織ると、屋敷を出た。

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