王に愛された女




 気が付いたとき、もう背中は痛くなかった。

 ぼんやりとした視界にメランコリーが映る。

「…ここは…」

「家よ、おじい様」

 メランコリーが言った。

 メランコリーはフリーゼルを見下ろし、

「何があったんですの?」

 そう聞いてきた。

「誰かが炎の神に挑んで…どうなったかは知らんが、それで儂の刻印を暴走させた」

 フリーゼルは孫娘の質問に答えつつも頭をフル回転させていた。

 王の妃になるのはガブリエルという神の証を持つ女。その女には心当たりがあった。

「…ミハエルの子か…」

 フリーゼルは憎々しげにその名を吐き捨てた。

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