王に愛された女




「…俺の妻になる女への文句を言いに来ただけなら、帰れ」

 国王が言った。

 フリーゼルは立ち上がろうと腰を浮かせ、その瞬間息を呑んだ。

「内関、伯爵が帰られるそうだ」

 国王が内関を呼ぶ。

 フリーゼルは背中に走る激痛に悶絶した。

「…ぐあっ…」

 痛むのは、ちょうど刻印の場所だった。

「何故だ…」

 炎の神が、誰かと戦っているのだろうか?刻印が痛む理由など、それしか考えられなかった。

 そう、誰かが力を封印した剣を手にしたくらいしか――。

「おじい様!?」

 メランコリーの金切り声が聞こえた。

「王様!伯爵の刻印が暴走しました!」

 ルークの低い声が聞こえたのが最後だった。フリーゼルは意識を手放した。

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