王に愛された女
オラシオンの問いに、フィオーレが静かに頷いた。
そして、左手を右手に翳す。オラシオンは、フィオーレの動きを無言で見つめていた。
赤い光がほとばしる。
「…そうか。オマエが…」
オラシオンは呟いた。
「え?」
フィオーレが右手から抜き出した炎の剣を握りしめ、オラシオンを見た。
「いや…昨日、フリーゼル伯爵の刻印が暴走した…。その原因がオマエだったのか、と言っただけだ」
「申し訳ありません」
フィオーレが頭を下げる。
「いや…。大したことではない。そうか、オマエは炎の神を倒したのか」
「そういえば、伯爵は炎の神の刻印を持っているのでしたね」
刻印が二回の覚醒を終えた時点で、どの神の子なのかはわかる。ただし、二回目が終わってもわからないのは全ての神を生み出した神の刻印だ。
そして、その神の刻印を持つ者こそが、神になる資格を持つ者なのだ。