王に愛された女



 ローグは分厚い本の中の刻印を見たまま、うんともすんとも言わなくなった。

「ローグ?」

 オラシオンは不安になってローグの肩を揺さぶる。

「…なぁ?何か知ってるんだろう?」

「…知っている…。知っているとも」

 ローグは小さな声を漏らした。

「なら、教えてくれよ」

「…オマエは思ったことがないか?」

 うつろなローグの言葉に、戸惑いつつもオラシオンは

「何をだ」と問うた。

「神の刻印が、東洋の国に伝わる梵字に似ていると」

 ローグの言葉に、オラシオンは頷いた。

「あぁ、何回も思った。ガブリエルの刻印を見るたびに」

「…なら、梵字の意味は知っているか?」

 オラシオンは首を振る。

「梵字について学んだことはない」

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