王に愛された女



「そうか」

 そう言ったきり、ローグはまた少し黙ってしまった。

「…ローグ?」

「……この王妃の刻印は何かに似ているだろう?」

 ローグがガブリエルの刻印と同じ図柄を指さす。

「あぁ…。梵字のア字に似ているな」

 梵字のア字は、梵字の土台になる文字で梵字を生み出すときに多く用いられるということだけはオラシオンも知っている。

「梵字のア字は、梵字の土台だ」

 ローグが小さな声で、ゆっくりと言った。

「あぁ、それだけは俺も知っている」

「なら、もうわかっただろう?」

 ローグの真剣な眼差しを受け、オラシオンは思考を巡らせる。

 だが、どうしてもわからない。

「いや…」

 オラシオンは首を振った。

「なら、教えてやろう」

< 199 / 267 >

この作品をシェア

pagetop