王に愛された女
「…もっと、傍にいたかった…」
オラシオンが蚊の鳴くような声で呟く。
「え?」
かすれた声が口からこぼれた。
「…もう俺はダメだ…」
薄暗くてわかりにくいが、オラシオンの目が閉じていることがわかる。
「オラシオン?冗談だよね?」
「…自分のことだ。それくらいはわかる…」
ガブリエルは、自分の腹に触れるオラシオンの手をギュッと握りしめた。
「諦めないでよ…」
「…ガブリエル…」
「オラシオンが死ぬなら、私だって死ぬから」
今さっき決めたことを口にすると、オラシオンの体が微かに動いた。
「…何、言ってんだよ…。オマエの腹ん中には…子供…いんだぞ…?」
「この子は生まれてきても、私たちの過去の柵(シガラミ)に縛り続けられてしまう…。そんなの、嫌よ。死ぬときは、全員一緒よ…」