王に愛された女




 言い聞かせるように言うと、オラシオンが長く息を吐く音が耳に届いた。

「…ガブリエル、こんな俺だったけど…傍にいてくれてありがとう」

 まるで遺言のような言葉に背筋が凍りつく。

「オラシオン!?まるで、遺言みたいだよ!?」

 ガブリエルはオラシオンの手を強く握りしめた。

 だが、オラシオンは動かないし、喋る気配さえない。

「ねぇ!?」

 恐る恐る、オラシオンの口元に手を翳した。

 何も、感じられなかった。

「…死んでる…?」

 ガブリエルはオラシオンの顔を見た。外の松明のおかげで微かに見える彼の横顔は安らかで、まるで眠っているようだった。

「…オラシオン…」

 呟き、ガブリエルは外を睨んだ。アリシアと見張り番の顔がこちらを覗き込んでいる。

 ガブリエルは微かに滲んだ涙を拭い、息を大きく吐き出した。

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