王に愛された女




 ガブリエルが神だった。

 その真実をフィオーレが知ったのは、オラシオンが牢屋に入れられた三日後のことである。

「…夜の空気は澄んでいていいな…」

 フィオーレはガブリエルの妊娠のことを聞き、馬に乗って王宮へと向かっている最中だった。

「…でも、アイツが妊娠なんてな。父さんが知ったらどう思うのかな…」

 フィオーレの脳内にガブリエルの顔が浮かぶ。

 少し前の生活からは、本当に想像がつかなかった。

 ガブリエルもフィオーレと同じ貧乏人で、王や貴族とは縁遠い生活をしていたのに、ほんの少しの間に王室へ仲間入りし、王との婚姻が決まった。

 そして、妊娠した。

 少し前の自分たちがそれを聞いたら、どう思うのだろう。

 それを想像して、フィオーレは苦笑した。

「…信じられるか、って言うだろうな…」

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