王に愛された女
今でも、まだ信じることができないのだから。
フィオーレは馬の腹を蹴った。
少しでも早く、ガブリエルに会いたかった。
◇◆◇◆
城下町に着いた頃、フィオーレは違和感を覚えた。
夜更けなのに、街中は妙に騒がしかった。
「何があったんですか?」
フィオーレは馬から下り、近くにいた女に聞いた。
「それがね、重臣だったルークさんが王様になるそうなのよ」
女の言葉に、フィオーレはハッとした。
その言葉は、ルークが王になった事実と、国王オラシオンの失脚或いは死刑が決まった事実を告げていたからだ。
「…王様は…?」
フィオーレは逸る胸を押さえて尋ねる。
「…それが…」