王に愛された女





◇◆◇◆

 オラシオンとガブリエルの家は質素な家だった。

 レンガ造りの小さ目の家の庭で小さな少女がボールをついて遊んでいる。長い金髪を頭のてっぺんで一つに結わえられている。

「ねぇお父様!!」

 少女が家の窓辺に走って行った。

「どうしたんだ、クリスティーヌ」

 窓から顔を出したのは、緑の髪の男である。

「お父様、一緒に遊ぼう!!」

「わかった」

 二人の会話が聞こえた。

「お母様も呼んで!!」

 少女――クリスティーヌが嬉しそうに言う。

 少しして、見覚えのあるシルエットが家から出てきた。

「…これで、満足しましたか?」

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