王に愛された女



 アイリーンの家の前でフィオーレと別れてから、ガブリエルはハッとした。

 もしかしたら兄は、赤い玉のことも何か知っていたのではないか。

 知っていないにしても、刻印で繋がった自分と玉について何も考えないわけない。

 何か考えていることがあったに違いないのだ。

 聞いておけばよかったなと軽く後悔しながらガブリエルはアイリーンの家に足を踏み入れた。

「洗濯物、洗い終わったのね。ありがと」

 アイリーンが家の中庭から顔を出した。

 彼女は、洗濯物を干している所だった。

「…どうしたの?顔色悪いけど」

 アイリーンに言われた途端、ガブリエルはその場に倒れた。

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