王に愛された女
ガブリエルは尋ねた。
なんとなく、何を言われるかは想像がついていたが、聞かずにはいられなかった。
聞くのが怖かったんじゃない。知るのが怖かったのだ。自分の考えたことが、嘘であってほしいと願いながらガブリエルは兄を見上げた。
「刻印の秘密を隠すためとしか考えられない」
「つまり、父さんは――」
「あぁ、知ってたんだろうな。オマエの刻印が何なのかを」
ガブリエルは、深い溜息を洩らした。
考えたことは当たっていた。
「…父さん、何してるのかなぁ今頃」
フィオーレは首を振った。
「俺も知らない」
ガブリエルは洗濯物の入った籠を抱えるとアイリーンの家を目指して歩き出した。これでとりあえずノルマ達成だ。早く昼ごはんを食べてしまおうとガブリエルは思った。