王に愛された女
風が草原を吹き抜けて行った。
クリスティーヌの左上腕部にある刻印を撫でながらガブリエルはオラシオンを見上げた。
「まさか、あなたが探していた四人目の刻印を持つ者が、私たちの子供だったなんてね」
ガブリエルはそう呟いてくすっと笑った。
「あながち、間違っていなかったな…」
「え?」
「いや、十年前に占い師がもうじき見つかるだろうって言ってたんだ。その…四人目の者がさ」
オラシオンはそう言って、空を仰ぐ。
彼の左目は瞼の上から斬りつけられ、もはや二度と光を映すことがなくなってしまった。
「…あながち、私が神だってことも間違ってないよね。神の母体である刻印を持つ私から別の神が生まれてきたわけだし」
ガブリエルはクリスティーヌを見やった。
「…にしても、月日の流れって早くて本当に驚かされる…」