王に愛された女



 ガブリエルは腰まで伸ばした金髪と青い瞳を持っている。土で汚れた肌は色白、十七歳になっても背はなかなか伸びず、まだ150センチを超したばかりだ。体もバレリーナのように華奢だ。

 兄のフィオーレは銀青の長い髪を後ろで束ねている。眼は左右とも違い、右目は青、左目は赤色をしている。肌は元から日に焼けた色で、土で汚れていてもあまり変わらない。身長は高く、ゆうに180センチは超している。体格も逞しく、余分な脂肪は一切ついていない。

「転んだのか?」

「うん、そこの砂利道で」

 ガブリエルは兄の顔色がサッと変わったことに気付いて顔の前で手を振った。

「大したことはないから安心して?」

「…そうか」

 フィオーレは納得しきっていない顔で頷いた。

 ガブリエルは来ている服の左袖を破いた。破いた部分を怪我した膝に巻きつける。兄妹の決定的な違いはもう一つ。

 それは、ガブリエルに刻まれた刻印だ。左上腕部には梵字のア字にもよく似た刻印が刻まれている。それがどこでつけられたのか、誰につけられたのかは村人たちも知らないようだ。

 それを知っているであろう兄妹の両親は、二人が物心つく前に行方をくらませてしまった。死んだのか、或いはどこかで生きているのか――。

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