ブラックⅠ-出会い-
唖然としている私の元へ
コンコンと控えめなノック音が届く。
「アオイちゃん起きた?」
「あ、はい!」
どこか優しげで品に溢れた声。
きっとアキさんの声。
「入るね?」
ガチャリと音を上げ開かれた扉からはやっぱりアキさんの姿が見えて、
たった一回しかあっていないのに声を聞いただけで分かるなんて自分で自分に驚いた。
でもきっと私が凄いわけじゃない。
アキさんの声がステキで印象的なんだと思う。
「おはよう」
上品で甘い笑顔、まるで何処かの王子様だ。
「おはようございます」
「そのダンボールの山はリュウガからアオイちゃんへ。好きに使ってね」
え?リュウガさんから私に?
「って言っても選んだのは下の奴らだから、気に入ったのがあるか分からないけど」
どうやら何にも持っていない私へ用意して下さったらしい。
「あの、でも私お金ないんです…」
郁也と過ごしていた私はもちろんバイトなんかさせてもらえるはずもなく、お金なんて一銭もない。
それに急いで郁也にバレないように来たから、カバンすら持ってきてもいない。