星月夜のマーメイド
何も言わずじーっと見つめていた光輝に、エレンは言葉をかけた。
「あの…光輝君、そろそろ降ろして…」
「駄目」
「重いし…」
「軽すぎ。普段ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ…っていうか視察に来たんでしょ?」
「そうだよ。俺がここ選んだからちゃんと視察しなきゃ。」
中学の実習として職業訓練を体験する機会があり、今年は光輝の提案でこの果樹園にお願いする事になった。
「じゃあ、早くしないと日が暮れちゃう…。」
「いいよ、今日無理ならまた来るから。」
「光輝君…。」
よいしょっと言って、エレンを降ろした光輝は、エレンの前に立ち真っ直ぐな瞳で思いの丈を伝えた。