星月夜のマーメイド
その頃の彼は、悩んだ挙句夢であった教職には就かず一般企業に勤めていました。
それには理由がありました。
彼の実家が地元ではかなり有名な企業で、彼はいずれその会社を継がなければいけないこと。
将来が決まっていたけれど、教職の道を諦められず親に黙って東京の大学を受験したこと。
その事でお義父さんから厳しく叱られたため、就職までは裏切ることが出来なかったこと。
教職に就かない代りに、2年間は他の企業で武者修行をする約束をしたこと。
大変驚きました。
私はでっきり教職の道に進むと思っていたからです。
子供が大好きな彼。
算数が得意な彼。
でも…できなかった。
親を捨てられなかった。
その気持ちを隠して、ずっと自分と葛藤していたなんて。
私にもなぜ教職の道を諦めたのかは話しませんでした。
心配かけたくなかったのでしょう。
『他にやりたいことがみつかったから。』
そう話てくれていました。
だから何も疑わなかった。
彼が悩んでいるなんて思ってもみなかった…。