星月夜のマーメイド


あれから約5年。

それまでもちょくちょく中島さんとは電話もしていたし、ご夫妻で島に遊びに来てくれたこともあった。

光輝君の話はその度に出ていたけれど、まさか教師になっていて、しかもこんなに近くにいたなんて。




「うふふ。中島さん、知ってたんですね。」


「当たり前よ。大学4年生の時、毎日のように聞かれていたもの。あなたの住んでいる地域。」


あははと中島さんが笑っている。


「ずーっと一途にエレンちゃんを思ってくれたんだから、受け入れてあげてね。まぁ私から言わせたらまだまだ虫みたいに小っちゃい男だけどさ。」


「中島さーん。俺の悪口言わないでよ。」


横にいた光輝がエレンの電話をスッと取って口を挟む。


「あら、誰に向かって言ってるのかしら?私がいなかったら今のあなたは…」


「あーもうわかったから。その通りです。中島さんのおかげです。」


「エレンちゃんがあなたを忘れないように、話す度にあなたの話をしたし、話を盛ったわよ。それはそれは大きくね。」


「なんも言えないっす。」


その会話に私も笑ってしまった。


「エレンちゃん、聞こえてる?」


「あ、はい。聞こえてます。スピーカーフォンにしていました。」


「だと思ったわ。でね結論。」


「はい。何でしょうか。」

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