【短編集】ライン
「かな・・」
それ以上は何言わなかった。
私が、言わせなかった。
離れていった彼の手を、私は引き寄せて、思わず胸に飛び込んだから。
驚いた彼は、私に飛びつかれた拍子にしりもちをついた。
彼の胸に顔をうずめて、肩を震わせた。
上から、どうして、と彼の優しい声。
「ほんとは、だいすきなの」
彼は黙って私の頭をなでる。
顔は見てないけど、彼も泣いてるのが、撫でる手から伝わってくる。
「でも、岡山優しすぎるから、きっと私、岡山のこと」
「一緒にいられないほうが、俺には苦痛だや」
言うと、一気に鼻をすする音。
見ると、涙でぐちゃぐちゃになった顔をこすっている。