嘘吐きなその唇で



だから、今夜も朝比奈さんをこの部屋に入れる。



明日も入れる。



そして、



『(あなたに抱かれる)』



「灑良……、」



切なげに私の名を呼んだ朝比奈さんは、顔を近づける。



その酷く悲しそうな瞳を見て、いつも思うのだ。



好きじゃないなら、そういう態度を取るな。



私を抱くな、と……。



この蟠(わだかま)りを持ったまま静かに目をつぶった私は、朝比奈さんに呼吸を奪われた。


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