嘘吐きなその唇で



「朝比奈先生。そうやって、また灑良に触る」



「いやー、灑良さんがあまりにも可愛くて、つい」



朝比奈さんは口元に綺麗な弧を描く。



平生の雅哉なら「朝比奈先生、変態。ロリコン!」と無邪気に笑って揶揄(やゆ)するのに、この時は違った。



「生徒に限らず、先生の彼女さんにも勘違いされますよ?その軽率な行動が」



柔らかい口調だったが、明らかに棘が含んでいる。



その棘は私の心をえぐった。



その追求するような視線を朝比奈さんに向けている雅哉が怖い。



“何かに勘付いているのではないか”という不安に襲われ、手汗が噴き出た。


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