祈りの月
「迎えの船はいつ来るの?」

「5ヵ月後。研究所の職員は、皆、乗船許可が出てる」

 カイが告げると、サリーシャは、ふっと小さく息を吐いた。

「寂しくなるわ。・・・・・・地球は、遠いもの。きっと、もう会えないわね・・・・・・」

 心底、残念そうに言う彼女に、カイは心の中がざわつくのを感じた。

 地球は、確かに遠い。一度、離れれば戻ることはまずないだろう。

 けれど、それが何なのか?

「サリーシャ・・・・・・俺なんか、ティルシアに居たらいけないんだ」

「なに言ってるの? そんなこと言って」

 サリーシャが怒ったようにカイを見上げる。

「カイは、まだ気にしてるのね、あなたのお父様のこと。だけど、それは」

「――気にするなって言う方が無理だろうっ!?」

 サリーシャの言葉をさえぎって、カイは声を荒げた。

 一瞬で体が熱くなった。


 ――『父』ということば。

 思い出したくもない・・・・・・!!


「なんで、責めないんだ!! 俺の父が、この海を汚した張本人なんだぞ!!」

 カッとして、カイは叫んでいた。

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