祈りの月
 そう。よっぽど、責められた方がましだった。

 カイの父親の罪を知っているのだから。

 この美しかった『原始の海』を汚染させた原因を作り出したのは紛れもなく自分の父親だった。

 そして、カイはその息子だ・・・・・・。

 なのに、誰も、カイを責めない。

 責められた方が、楽な場合もあるのに。

 ティルシアは優しく包むだけで、誰もカイを責めはしなかった。

「・・・・・・ごめんなさい、カイ」

「・・・!」

 サリーシャの気遣うような謝罪の言葉に、カイは我に返った。

 また、やってしまった。

 後悔が押し寄せてくる。

 父親のことになると、歯止めが利かなくなるのはいつものことだった。

特に、サリーシャは子供の頃からの知り合いなせいか、強い言葉を浴びせてしまうことが度々、あった。

ちょうど、今のように。

「ごめん・・・・・・怒鳴って・・・・・・」

 カイは片手で口元を覆うと、顔をそむけた。

 彼女に、非はなかった。何ひとつ。

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