祈りの月
「でも、まさかイルカの声?」

 カイは否定も肯定もしなかった。

 目の前に、レイアがいるのだ。答えは必要ない。

『カイ以外の人にも聞こえるのね。嬉しいわ』

「ああ、どうやらそうみたいだな。レイア、彼は友人のドゥリー」

『初めまして、ドゥリー』

 ぱしゃん、とレイアが大きく弧を描いて飛び上がる。

 水滴をまとった流線型の体が、陽光を浴びてきらきらと輝いた。

「こちらこそ・・・・・・よろしく」

 動揺を隠せない様子のドゥリーに、レイアの軽やかな笑い声が響いた。

「驚いたなあ・・・・・・まさかイルカが話せるとは思わなかったから」

「まあ――普通は、話せないだろうな」

 たぶん、声が聞こえるのも、月の力なのだろう。

「何でもいいよ。イルカと話せるなんてすごいじゃないか!」

 ドゥリーは目を輝かせている。
 
「・・・・・・」

 まあ、確かにそうなのだろうが。

 カイの性格では、何でもいいとは流せない。

 適応力の高いドゥリーは、レイアに向き直ると、ここぞとばかりに質問を始めた。

「えっと・・・・・・レイアは、どこから来たの? この辺の海じゃないだろ」

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