祈りの月
「ああ、そういうことか・・・・・・」

 レイアの言葉に、ドゥリーが納得して頷く。

 カイが何よりも――おそらく自分自身よりも、海を大切に思っているということは、友人であるドゥリーには良く分かっている。

 学生時代も、カイは一心に勉強していた。

 海洋研究員になるために。

 研究所に入ってからは、誰よりも遅くまで働いている。

 すべては、海を救いたいという強い想いから。

 ドゥリーはカイのその気持ちを尊重してやりたいと思う。共に手伝ってやりたいと思う。

 彼も海が好きなのだ。

『カイは海を愛してくれてるもの』

「―・・・愛ね。そうだな」

 ちらっと、笑みを含んだ視線がドゥリーから流れてくる。

 カイはため息をついた。

「あんまり堂々とそういう話はやめてくれ・・・・・・苦手なんだ」

 カイの様子に、レイアとドゥリーの笑い声が重なる。

『また、夜になったら、砂浜に行くわ』

 短く言い残して、レイアはすぅっと船から離れた。

 時折、楽しむように空を飛びながら。



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