祈りの月
(だから、だったのね・・・・・・)

 カイから聞いた話で、レイアはようやく理解することが出来た。

 月が、なぜレイアにそれを求めたのか。

 仲間たちが、なぜ、いなくなってしまったのか。

 『毒』と、カイは言った。

 とても、気持ちの悪い言葉だと思う。

 海に『毒』がある、なんて――。

(だから、みんな、突然苦しんだの・・・? あんな風に・・・・・・)

 苦しむ姿を、レイアはたくさん目にしてきている。

 長い孤独の旅の中で、たくさんの死を目撃していた。

 のた打ち回るように、苦しむ様子を見てきて、いる。

(ああ・・・・・・)

 ぽろり、と閉ざされた目じりから涙がこぼれる。

 ぽろぽろと、流れ始めた涙は止まらない。

(カイ)

 心の中で名前を呟き、レイアは身を緩やかな波間で、美しい体をよじった。

 カイの緑色の優しい眼差しが閉じたまぶたの裏によみがえる。

 いつも、レイアを気遣っている瞳だ。

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