籠の中
 なぜ、僕の場所が。それに高津じゃない」 
 僕は落ち着きを取り戻し彼女の方を見た。
「なぜって、私もこの街に住んでるんですから、仕方ないじゃないですか。偶然ですよ、偶然。それに、また高津さんじゃないって言い張るんですか。一度認めたんですから、撤回は無効です」
 最高裁で審判が下ったような言い回しただった。
 無効。
「それよりじゃあ、なぜ僕が高津だとわかるんだい。だっておかしいじゃないか、君は何のためらいもなく僕が高津と決めてかかっている。僕の顔を知ってるのかい」
 僕は早口で捲し立てた。早口で喋ったのはいつぶりだろうと思った。
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