籠の中
 僕が彼女の世界を邪魔しないように、テーブルにあった瓶ビールをグラスに注いだ。それを一気に飲み干し、また瓶ビールをグラスに注いだ。今度は三分の一程飲み干して止めた。彼女が喋り出したからだ。
「考えてみれば、何かしら欠けたものがあった方が魅力的に見えるのかも。完成されたパズルよりもワンピース欠けてた方が、それはそれで味わいがあると思うの。人間だって、頭がいい、こんな凄い仕事をしている、こんな研究をしている、こんなに可愛いの、なんて言っても、必ずどこかしらの欠けた知識や、パーツが存在している。結局は終わりのない世界よ。ねえ、そうは思わない」
 彼女もグラスを持った。僕は彼女にビールを注いだ。それを彼女は一気に飲み干した。だから僕はまた彼女にビールを注いであげた。
< 88 / 203 >

この作品をシェア

pagetop