籠の中
「そうなのかもしれない。誰しも欠けたものを探している」
「深いわね。人生もビールもレクイエムも」
 彼女が感慨深げに言った。
「そのモーツァルトの音源を君は持ってるのかい」
 僕は訊いた。持ってて欲しいと願いながら。
「もちろん持ってるわよ。今度貸すわよ」
 彼女は、喪服に付着していた埃を払った。
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