俺様と闘う私『一部・完』
 場所を移動したところで、病院から出ていくわけにも行かず……


 警察の方で手配してくれたんだろう、病院の一室を借りて話をすることになった。



 「形として書面に残さなきゃいけないので」



 一言断りを入れられて、私と母が並ぶ前でパソコンを取り出す若手刑事。


 その様子をぼんやりと見届けながら、ただ時間が流れていく。



 不意に背後で



 「私は外に出ていますので」



 志貴の声がした。


 振り返るとまさに外に出ようと、扉に手をかける志貴。



 ―――行かないでっっ



 なんて言葉が口をついて出そうになったけれど、その前に



 「すみません」



 年配の刑事さんがそう言ったので、どうやら出て行かなきゃいけない空気らしいことは分かった。



 嫌だな……って思ったのが伝わってしまったのか



 「ドアの外、居るから」



 志貴が遺してくれた一言で、少し肩の力が抜ける。


 今、知り合いが傍に居てくれることが心強い。


 心許無いまま、私は隣の母を見やる。


 まだ、どこか遠くへ精神を旅立たせたままの母に、私は声をかけられなかった。
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