俺様と闘う私『一部・完』
 志貴の声が聞こえたはずなのに、静かすぎる状況におかしさを感じた私が玄関へ行くと、固まる母と困った表情の志貴が居た。


 「あ……志貴」

 「よぉ。飯、食ったか?」



 手を上げて私に挨拶をそれで済ませた志貴は、開口一番そう言った。


 彼なりの気づかいだろう、ということは分かる。


 けれど、食欲の湧きようがなくて私は顔を横に振った。



 「そか」



 そう言って、黙る志貴。


 そんな私達の様子を見て、何かにピーンと来た母は漸く固まった状態から融解した。



 「あら? あらら!? もしかして、理香の!!!」



 丸一日ほどテンションの低かった母が、ようやく復活した。


 少しは感情が落ち着いた様だ。



 けれど、それは私としては嬉しくない反応でのテンションの上がり方だった。



 「あの、少しお話をさせて頂きたいのですが」



 丁寧に断る志貴。


 それに対して母は……



 「さぁどうぞどうぞ!! こちらへっ」



 先程の訝しんだ顔はどこへ行ったのやら。


 気持ちを持ち直した母は、テンション高く志貴をリビングへ案内した。



 「では、お邪魔します」



 丁寧に靴を揃えて上がる志貴。


 その態度に『コイツ、大人だ』なんて思いながら見ると、久しぶりに偉そうな態度でニヤリと笑われた。


 そして


 「見てんじゃねーよ、バカ理香」



 と暴言を吐く。


 それがあんまりにもいつもと同じ過ぎて



 「うぬぼれんな!!」



 と跳ね返した。



 いつものこんなやり取りが、私を少し元気にした。
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