俺様と闘う私『一部・完』
 「もし良ければ……なお話なのですが、少しよろしいですか?」


 

 丁寧な口調で口を開いた志貴が、そう話しかけたのはもちろん私ではなくて母だった。



 「え、私?」

 「えぇ、それに……理香も」

 「ん?」



 私達親子は、なんとなくピリリとした空気を纏いだした志貴に合わせるべく、きゅっと姿勢を正して座りなおした。




 「私、渡辺志貴と申します。今回の、事故のことですが」

 「あ……」



 名刺を母に差し出してから、志貴は話を切り出した。


 昨日の今日で、今まで何にもそのことに触れてこなかった志貴。


 なのにあえてその話題に触れた。



 ―――だから、この空気か。



 そう納得したら、あ、と声が漏れた。



 横目で母にジロリとにらまれ、私は口を噤む。




 「こちらから申し上げるのは差し出がましいと思い、どうかと悩んだのですが……今回の事故の件、弁護士に私をつけませんか?」

 「へっ!?」



 私は志貴のその言葉に固まって、ただ目だけが彼を見つめてた。
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