俺様と闘う私『一部・完』
 ハブとマングース? だっけ。



 なんかそんな感じのバチバチした火花が見えそうな気がした。

 しばらくたって……根負けしたかのように、ようやく母が口を開いた。


 ふぅーっと息を吐いてから。



 「渡辺さんのおっしゃりたいことは良く分かりました。でも、私は……保険金だとかお金は求めてないですよ? それで義母が戻るわけじゃないですから」

 「えぇ」

 「それでも、弁護士は必要?」

 「私なりに、個人で捜査することも依頼頂ければ可能になります。ですが現状では何のお力にもなれません」



 ピシャリと言い切る母に対して、切なそうな表情で志貴が懸命に訴えている。



 ……って、なんでそんなに志貴が力入れてるんだろう?



 それに―――うちのことなんて、どうでもいいよね?



 不思議な気持ちを抱いて私は白熱する二人を、見つめた。



 「そうですか……分からない、と言えば分からないし、分かったと言えば分かったような? ですねぇ」



 母がいつもののんびり口調に戻ってそう言うと、カップを持ち上げて珈琲を一口啜った。


 志貴はその母の表情を見て、苦笑した。


 なんだか、母には志貴は弱いみたい。


 強気な志貴しか見ていない私には信じられないけど、こんな志貴もなんだかいいな。



 ―――って、いいなって何!? 


 何なの!? 落ち着け私!!



 一人で、はにかんだり赤くなったりジタバタする。


 それをチラリと横目で見た母が、カップを置いて口を開いた。
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