俺様と闘う私『一部・完』
「端的に言うと……私、いや俺が。理香に救われた恩返しをしたいんです」
そう切り出した志貴は、いつものようなニヤニヤでも偉そうでもない、優しい表情の笑顔を私に見せた。
―――うわっ、何、この顔。
その優しい表情に私の顔は赤くなるし、心臓はドクドクと煩くなる。
も、心臓に悪すぎるってばっっ!
私一人がわたわたしていると、そこに合いの手が。
「恩返し? それはまたたいそうなことね?」
「いえ、本当に救われました」
「続けて、下さる?」
ニコニコとニヤニヤの狭間の笑みを浮かべる母に押されて、志貴は続けた。
「俺が、初めて理香に会ったのは、1年くらい前のことです。当時俺は、クライアントとの関係がうまくいかないままに裁判に出た結果、いろいろと詰めが甘かったせいで負けた依頼がありました。 内容については仕事のことなので話せませんが……とにかく、俺はかなり落ち込んでいました」
そう言って、カップを見つめながらその縁をそっとなぞった志貴。
やっぱり、落ち着かない感じ……
でも、続き聞きたい。
助け舟を出さず私もジッと次の言葉を待った。
勿論母も。
「仕事にも身が入らなくて、仕事もそこそこに家に帰ろうとしたある日。家の前に誰かが居ました。俺はなんだか和やかに両親と話すその輪に入りたくなくて、遠くからぼんやり見つめていました。
―――ずっと笑顔の彼女を」
まるで懐かしむように当時を思い返した表情の志貴。
私のことなのに、まるで愛おしそうな顔でそんな風に語られると、恥ずかしさがこみ上げる。
そう切り出した志貴は、いつものようなニヤニヤでも偉そうでもない、優しい表情の笑顔を私に見せた。
―――うわっ、何、この顔。
その優しい表情に私の顔は赤くなるし、心臓はドクドクと煩くなる。
も、心臓に悪すぎるってばっっ!
私一人がわたわたしていると、そこに合いの手が。
「恩返し? それはまたたいそうなことね?」
「いえ、本当に救われました」
「続けて、下さる?」
ニコニコとニヤニヤの狭間の笑みを浮かべる母に押されて、志貴は続けた。
「俺が、初めて理香に会ったのは、1年くらい前のことです。当時俺は、クライアントとの関係がうまくいかないままに裁判に出た結果、いろいろと詰めが甘かったせいで負けた依頼がありました。 内容については仕事のことなので話せませんが……とにかく、俺はかなり落ち込んでいました」
そう言って、カップを見つめながらその縁をそっとなぞった志貴。
やっぱり、落ち着かない感じ……
でも、続き聞きたい。
助け舟を出さず私もジッと次の言葉を待った。
勿論母も。
「仕事にも身が入らなくて、仕事もそこそこに家に帰ろうとしたある日。家の前に誰かが居ました。俺はなんだか和やかに両親と話すその輪に入りたくなくて、遠くからぼんやり見つめていました。
―――ずっと笑顔の彼女を」
まるで懐かしむように当時を思い返した表情の志貴。
私のことなのに、まるで愛おしそうな顔でそんな風に語られると、恥ずかしさがこみ上げる。