俺様と闘う私『一部・完』
 去っていく母を茫然と見送った後、ちろりと志貴を見あげた。

 
 意味不明なんだけど……という意思を込めた視線で。


 だけど―――



 「お前はずっとバカでいろ」

 「ば、馬鹿って!!」



 ニヤリと嫌味な笑みを浮かべて見下ろされただけだった。


 私はそんな志貴の横で、ムキーっといつものように叫びながら……さっきまでの志貴は別人で、目の前のコイツとはおそらく中身が違うんだと私は思うことに決めた。


 じゃないと、あのお母さんと対峙していた志貴が信じられない。


 そんなことを一人悶々と考えていたら、いつの間にかかなり近くにいた志貴がスッと手を伸ばしてきた。



 徐々に近づいてくる手に、ドキドキしてぴくっと震える。



 ふわっ



 瞬間、私の頬が優しく包まれていた。



 伸びてきた、その手に。



 「し、き……?」

 

 突然の出来事に、一瞬茫然とするも、状況を理解して顔が熱くなる。



 火照る、なんてもんじゃなくて、着火したって感じなくらいに。
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