俺様と闘う私『一部・完』
 ふわり


 周りの空気が動いたかと思ったら。


 ちょーーっとだけ触れたくらいの


 羽みたいなキスが……


 私の唇に落とされた。




 もちろん私の人生初めて、なわけで。


 あまりにも一瞬のことに、目を閉じることさえ出来ない。



 そんな、キス―――



 「な、な……っ!」

 「話は終わったら、だ。じゃあ」

 「ちょっっっ!?」



 スタスタと玄関へ向かう志貴を追いかけたいのに、今起きた事態について行けず、足の裏に根が張ったみたいに動けない。


 手は小さく震えちゃってるし、顔は真っ赤に熟れたトマトみたいだし。


 口はパクパクして金魚状態で。


 彼氏いない歴は継続中の御堂理香、21歳。


 天敵のようで、私のお客様で、時々優しくて、でもムカつく不思議な男。



 そして、つい今しがた私の家の弁護人となった弁護士様―――


 は、契約料とか言いながら私の、だいっじな。



 だいっっっじな!!


 ファーストキスを奪って、去って行った。


 時間が経って、漸くまともな思考が働いてきた私が



 「志貴の、バカーー!!」



 やっと発した第一声はこれだった。
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