俺様と闘う私『一部・完』
 「状況証拠」と言うらしいけれど、おばあちゃんの死の前後で車との接触はあった。


 それは確実で、来ていた服に付着していた車の破片とか、路面に残る痕跡だとかその類のものがあるからだそうだ。


 ただ、おばあちゃんがすでに意識を失って倒れそうだったところを轢かれたのか。


 それともピンピンしていたのに轢かれたのか……という判断を迫られると何とも言い難い、らしい。


 その上、事故状況がかなり不鮮明らしくて。


 歩道上を歩いていたのか、それとも路上を歩いていたのか、と言うのも問題点の一つなんだとか。


 人通りの少ない、当時の現場で。


 おばあちゃんが轢かれたのを目撃したと言う人は居なかったそうだ。


 もしおばあちゃんが、設けられた信号を守らず且つ横断歩道上を歩いていなかったとした場合。


 かなり情状の余地が相手方にあるとか……って警察の人から言われたと母に聞いた。


 正直、そんなこと私にとってはどうでもいい。


 だって犯人はおばあちゃんを轢いちゃったんだし。


 現におばあちゃんは死んでしまった。




 その現状に、何も変わりはない。


 ただ、事実を知る人間が事実を言わないがために、事実とは違う判断を下されるのは許されないと思う。
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