俺様と闘う私『一部・完』
 「すみま、せん……」



 緊張する志貴を凌ぐほどの緊張感を漂わせた男の人が、ほどなくして現れた。


 よれたTシャツに、綿パン。


 うっすら顎髭が生えてて、髪も梳いてる風でもなくて。


 線が細くて倒れそうな感じの、ひょろっとした男の人。


 正直、拍子抜けした。



 厳つい岩みたいなおじさんが来ると想像してた私は、あまりの予想との違いにイマイチ納得出来ずチラリと志貴を見る。


 けれど志貴は相変わらずピリピリしていて、相手を威嚇するには十分な程の殺気まで纏い始めた。

 
 
 ……だから、誰?

 

 ウエイトレスが来ても、一向に口を開かず、唇を噛みしめて俯く男を前に、志貴が



 「ホットを」



 と彼の注文を勝手に決めて、ウエイトレスを下げさせた。


 意味不明なこの展開に、私は二人を交互に見やること2回。



 私たちのテーブルだけが異様な空気を発しているのを感じながらも、その空気が変わることなく。


 先程のウエイトレスが芳しい香りを乗せたホットコーヒーが届いてもなお、状況は何も変わらなかった。
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