俺様と闘う私『一部・完』
 「あ、あのですね……」

 「いやいやいいんですよ! そういうこともあったりしますよね! どうぞどうぞ。しっかり捕まえてて損はないですよー。こんないいとこに住んでる人ですからねっ」



 おじさんは、やけに熱いウインクをしながら私にそう言ってきた。


 これって、やっぱり……だよね。


 昨日の母に、今日の配達を告げた時と同じ勘違いが起きている!?



 「さぁさぁ、こんなおじさんで止まってちゃいけないからね! 頑張れっ!!」



 ぐっと拳を握ってファイティングポーズをとった後、爽やか且つ嬉しそうな顔で力いっぱい手を振るおじさん。



 ―――もう、訂正するには無理な感じがすごぉーくある。


 私はガクッと肩を落としながらエントランスの呼び出しで2002を押した―――




 相変わらずの無愛想な返答で自動ドアを開けてもらい、私は20階で降りる。


 いつもどおりに変わらずドアを開けると、いつもとは違い、なぜか身なりを整えてスーツを着た志貴がそこに居た。


 「おはよう、ございます」

 「ん、はよ」

 「今日は……起きてたの?」

 「ちょっと急ぎ」

 「だったら、昨日のうちに渡したのに」



 いろいろな誤解を受け続けてきた私は、商品を取り出しながらつい愚痴っぽく言ってしまった。



 「いいんだよ、契約、だからな」



 なぜか相変わらず偉そうな表情の志貴。


 口端をあげながら、よく似合ってるスーツ姿のその表情を見ると、どうみたって悪人としか思えない。


 偉そうなその態度に、イラっとくるっちゃくるんだけど……




 ―――まぁもういいや。



 奴は悪人だから仕方ない。



 と、むちゃくちゃな結論付けをした。


 偉そうなのはいつものことだしね。
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