俺様と闘う私『一部・完』
 「なんでこうなるのよーっ!」


 誰も周囲にいないことをいいことに、私は思わず叫んだ。

 

 びしょびしょに濡れて、デニムも色が濃く重たい。


 ミュールにしたのは正解だったけど、そんなことはどうでもいいくらいに濡れた。


 マンションのエントランスに着いたときには、髪からポタポタと滴が伝っていて、この状態で入っていいの? というくらいにずぶ濡れになっていた。



 「おはよ……え? 御堂さん!? 大丈夫かい?」



 いつものコンシェルジュのおじさんが、慌てて走ってきてくれた。



 「あ、はいっ。すみません! こんなので入って来ちゃって」

 「や、それはいいんだけど。ほらコレ使うといいよ」



 おじさんは、ふんわりした質の良さそうな白いタオルを差し出してくれた。


 さすがは高級マンション。


 安物のタオルなんか出てこない……というか、常備されてるなんて凄い。


 なんてどうでもいいことを感じながら受け取った。
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