俺様と闘う私『一部・完』
 「おい! 理香っ!」


 ドタドタと走る音が聞こえたかと思ったら、私の体をスッポリと抱き止めて立っている志貴がいた。



 「はれ……?」

 「お前、熱ないか?」

 「ね、つ……?」

 「――チッ」



 何が何だか分からなくなっている私に対して、舌打ちをする志貴。


 いつもならカチンと来るはずなのに、今日は思考が追い付かなくなっていた。


 ただ―――



 グイ



 と手首を捕まれて引っ張られたことは理解できたので、慌てて身を引く。



 「ちょっ!? 何、する、のっ?」

 「つべこべ言わずについてこい」


 
 引っ張られるのを感じて、ミュールを慌てて脱ぎ捨てる。


 そしてそのまま、無理矢理家の中へ連れ込まれた。


 いつもなら反発するのに、私の思考はぐにゃぐにゃになっていて……


 気がついたときには意識を失っていた。



 家を出たときに感じた違和感。




 それは熱が出始めていたことだった。



 それなのに、私はどしゃ降りの中を傘無しで走るという暴挙に出ていたらしい。




 おバカなことに……
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