澄んだ空の下で
「…え?ここ?」
「そう」
車は地下に向かって降りて行く。
ここで、アンタは住んでんの?
あたしのマンションと比べ物にならない。
いや、もしやあんな所と比べちゃいけない。
住む世界が違う。
ふと、アオが言った言葉を思い出し、何でか分かんないけど、胸がギュっと苦しくなった。
車が停車すると、恭に続けてあたしも降りる。
あたしが居ると、場違いだろうと言う所に、今あたしは居る。
死ぬまでに味わう事もないだろうと、思っていた高級高層ビルのマンション。
…不思議。
夢なんだろうか。
もしや、今この人と居る事が不思議でたまらない。
「…マジか、」
不意にチッと小さく舌打ちをした後に恭は小さく呟く。
「…え?」
思わず声を返すと、恭はエントランスに入る手前の角であたしの肩をそっと掴んだ。
「ちょっと、ここに居て」
「え、あ…うん」
戸惑いながらそう言ったあたしから恭は肩から手を離し、クルッとその角を曲がった。
…え、なんなの?