澄んだ空の下で
「死にそうな目、してる」
覗き込まれた恭の顔を見た時、一瞬動揺したかのように瞳が揺らいでしまった。
「…なんでも、ない」
そう言い聞かせて。
そう言い聞かせて。
なのに、過去を蘇る様に、サエコと彼が抱き合って寝ている姿が頭の中を過った。
もう、昔なのに。
もう、過去なのに。と言い聞かせて消し去る様に深く深呼吸をする。
「送るから」
思わず頭を擦ったあたしに、恭は肩に掛けていたあたしの鞄をそっと取る。
荷物を全部持ってくれた恭は、あたしに背を向けてゆっくりと進みだした。
…だめだ。
思う様に動けない。
平然を居座ろうとしてても、やっぱし身体は思う様に動かない。
聞かれたかな、恭に。
一番聞かれてほしくないんだけどな。
変な空気流しちゃったな。
恭との距離が少しづつ開いていく。
その距離を縮めようと、あたしはゆっくりと足を進めた。