澄んだ空の下で

…―――


「…おい、若菜っ、」


学校に着くなり飛び交ったのは荒くしたアオの声だった。

おはよ。…と、そう言いかける前にアオに腕を引っ張られる。


「ちょっ、なに?」


もう今じゃひと目なんて気にしてらんない。

人気の少ない場所に来ると、あたしは眉を寄せた。


だけど、それ以上にアオの方が顔を顰めてた。


「言わなかったっけ、俺」

「え?」

「恭さんと係わんなって」

「あー…」

「あー…じゃ、ねぇよ。俺が知らねぇとでも思ってんの?お前、一緒に居ただろ?恭さんと、」

「……」


やっぱ情報早すぎる。

でも、そりゃそうかも知れない。


あんだけ目立つ人だったら誰でも気付くだろう。

そして、その隣に居るあたしが気になるはずだ。


「つか、マジやめろって」


そう強く言ってきたアオにあたしは視線を上げた。


「なんで?」

「なんでって、恭さんはよくねぇからだって」

「よくないって、アオ知らないじゃん」

「いやいや、お前よりかすげぇ知ってるから」

「でも、アオが思ってる程、悪くないよ、あの人」

「あのな、若菜、」


フーっと一息吐いたアオは顔を顰めたまま乱暴に髪を掻き乱した。




< 144 / 447 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop