澄んだ空の下で
途方に暮れる様に来た場所はやっぱり、ここだった。
ビルから見下ろす地上は人が溢れていて、綺麗だとは思わない人ゴミ。
夜になろうとしている空は薄暗くて、一日の終わりを告げる。
…帰りたくない。
何故かそう思ってしまった。
「…ルール違反」
不意に聞こえた声に一瞬ドクンと心臓が高鳴った。
変な胸騒ぎがする心臓に手をあてて恐る恐る振り返る。
「…え、」
目に映る先に見えるのは後ろの一番角に置かれているベンチで寝転ぶ恭の姿。
だから一瞬ビルを違えたかと思って、しまった。
確かめる様に辺りをキョロキョロし、目の前にあるもう一つのビルと景色を確かめる。
「間違ってはない。ここはお前の場所」
「……」
「ここに来たら来るかな、って思った」
「…なんで?」
「何も言わずに帰んのはルール違反」
「…っ、」
思わず、さっきまでの行動が頭を過る。
スッともう一度触った唇に鼓動が速くなった。